第189回国会 決算行政監視委員会 第3号 平成27年5月25日 ○柚木委員 おはようございます。民主党の柚木道義でございます。  きょうは、それぞれ閣僚の皆様、とりわけ官房長官におかれましては、きょうは官房長官会見のある日でもございまして、御調整をいただきましてありがとうございます。長官におかれましては、会見に間に合う段階で中座いただけるように、前半は長官を中心に質疑をさせていただければと思っております。  また、政府参考人の御登録をいただいておりますが、通告をさせていただいておりますし、余り技術的な細かい質問ではなくて、大きな今後の方向性や各大臣の御認識等をお伺いしますので、大臣答弁ということでよろしくお願いをいたします。  まず、前半、官房長官の方にお伺いをしてまいりたいと思っております。  きょうの資料の中に、この間、いわゆる放送法上のいろいろな認識、問題、これは個別の番組に対して、テレビ朝日であったりあるいはNHKであったり、自民党の方に幹部の方が聴取をされる、こういった状況であったり、あるいは、いろいろな報道の中で、せんだっても、十五日、衆議院の本会議で我が党の武正議員が官房長官に何点か質問をさせていただいておりますが、長官御自身の報道機関あるいはコメンテーターなどのそういう意味での報道、言論の自由等に対する御認識に対しても議論がこの間なされているところだというふうに認識をしております。  ここの資料には、この間いろいろな議論、指摘がされていることをつけておりまして、下線を引いているのは、その中でも私自身が問題を認識している部分についてこうさせていただいているわけです。  長官、さきの十五日の本会議では、例えばテレビ朝日の報道ステーションでコメンテーターの古賀さんに対しての圧力の有無であったり、あるいは、放送法があるから、それをしばらく、今後の局や番組の推移を見守っていきたいとか、あるいは、これまで、報道に対する圧力をかける、かけない、そういった部分の認識に対して問われて、それぞれ、圧力の有無、コメンテーターに対しても、ありません、あるいは放送法についても、当然のことなんですが、報道の自由、自律性、それから公平性、客観性、これがしっかり両立をされて適切な運用がなされるという意味です、そしてまた報道機関への圧力に対しても、過去もこれからもそういった認識は持っていない、これは当たり前のことなんですが、そういった御答弁をなされているわけです。  その御答弁を踏まえましても、私自身が、この間、報道関係者、あるいは今申し上げたことに対して私なりに取材をさせていただく中で、幾つか確認をさせていただかなければならないと思っております。  まず、菅官房長官の秘書官がおいでになるわけですが、テレビ朝日の場合は報道ステーションの番組の内容について、これまで、このときピンポイントということではありません、幾つかのそういう番組を個人がごらんになってなのか、場合によっては一緒にごらんになっている場面なのか、それはいろいろな報道や人から聞いた話ですので、私自身は、真実は長官にお伺いするしかないわけですが、その秘書官の方がテレビ朝日の幹部の方に、クレームの電話あるいはメールをしたという報道、あるいは私もこういう話をお聞きしている部分があるわけですが、そういった事実があるのか、あるいはそういった認識は長官におありなのか、お答えいただけますか。 ○菅国務大臣 まず、その一つの報道、この番組を見てどうかということの指示、そういうことは今まで全くしたことがありません。そして、そういうことも、私自身、命じたことも全くありません。 ○柚木委員 認識としてということも含めて、事実としてもないという御答弁だったと思うんですね。それはそれで大事な御答弁だと思います。そのような報道、あるいはそういったお話を私自身も伺う中で、真実はどこにあるのかというのは、やはり御本人にまずお聞きをすることしかできないわけでありまして、今そういうふうに御答弁いただいたということが、まず私の中でも一つのベースとなって、今後いろいろな話をお聞きすることがあったときにも、長官はそういった指示もないし、現実にもそういうことはないということだという認識で議論を進めていきたいと思います。  官房長官におかれましては、これは見方はいろいろあるかもしれませんが、安倍総理も報道関係の方とよく、トップの方と会われたり、会食をされたりというのが首相動静の中で報じられている部分がありますので、見方はいろいろあると思いますが、官房長官におかれましても、報道関係者に御自分の方からアプローチをされたり、あるいは実際に面会をされたり、そういうことを聞くわけですが、そういうことをなされているという私の認識はそれでよろしいでしょうか。 ○菅国務大臣 私自身からはありません。ただ、今までのつき合いのあった方ですよね、私が官房長官になる以前から。そういう方とは従前どおりおつき合いをしている、そういう程度であります。 ○柚木委員 今までおつき合いがあった方に対して、こちらからということではないんだけれども、従前のおつき合いの延長で、そういう御答弁ですよね。  その中には、それぞれ各局、テレビ番組、報道番組等もあるわけですが、例えば報道キャスターと言われる方々というのも含まれますか。 ○菅国務大臣 昔、政治部、私が政治家になってからつき合っていた方でありますし、専属のキャスターという方はいないというふうに思います。 ○柚木委員 専属のキャスター、政治部、ちょっと私、どういう意味なのかなと思って聞きましたが、どなたがテレビ番組をごらんになっていても、例えば報道ステーションでいえば当然古舘さんがメーンキャスターだと思いますし、他の各局の番組でも、いわゆるメーンのキャスターの方、あるいはサブのコメンテーター的な方、あるいはその局のアナウンサーの方で同席をされる方等がいるときに、この人はキャスターだな、そういう認識の方は、それぞれ看板キャスターの方も含めているわけですが、そういう報道キャスターの方というのは今の御答弁に含まれるかどうか、もう一遍確認させていただけませんか。 ○菅国務大臣 そこのテレビ局の中で連日出ているような方は、私はおりません。 ○柚木委員 だとすると、私がお聞きをしている部分とちょっと違う部分がございます。  それは、もう少し私自身も精査をさせていただく必要があるのだと今思いましたが、私自身がお聞きをしているのは、皆さんがよく御存じの、各局のいわゆる報道番組、その中でも非常に看板番組のいわばメーンキャスターの方とも長官はお会いになられて、そういうやりとりをされている、そういうことなんです。本当にそういう方とは面会されていませんか。 ○菅国務大臣 少なくとも私自身は、メーンキャスターの方とそういう形でつき合いはしておりません。 ○柚木委員 そういう形でつき合いはされていないという、そうすると、ひょっとしたら、長官の御認識はそうでなくても、何らかの形で会われた、そしてあるいはやりとりをされたというのはあるのかなというふうに私自身はちょっと推察をせざるを得ないんですが。  今の第二次安倍内閣で官房長官に御就任をされて、そういうキャスターの方と面会等、全く物理的にもないということなんですか。それとも、そういう認識じゃない場面ではあったかもしれないということですか。 ○菅国務大臣 私の方からそういう方にお会いをしたいという形の中で会ったことはありません。 ○柚木委員 御自分の方から主体的にアプローチをしてお会いしたことはないと。  それは、そうでない場合に、一対一なのかあるいはそうでない場合なのか、御自分の方からじゃなくてであれば、そういうキャスターの方とやりとりされたことは逆にあるという受けとめ方もできますが、それはそうですか。 ○菅国務大臣 何人かの方が集まる会、例えばかつての政治部長の会だとか、そういうのに呼ばれて行くことは、これはそれぞれの時代の中でありますけれども、そのメーンキャスターの方と一対一だとか、そういうことはありません。 ○柚木委員 ありがとうございます。  なぜこういうことをお伺いするかといいますと、安倍総理御本人が報道関係の、テレビ、新聞のトップの方と会われたり云々というのは、見方はそれぞれあると思いますが、私は、総理であれ官房長官であれ、やはりこれだけ今や衆参ともに巨大与党で、時の最高権力者である総理、あるいは事実上ナンバーツー、副総理もいらっしゃいますが、官邸の中で取り仕切っている官房長官が、そういう場があって、そしてまた場合によってはいろいろな報道、コメント、特にキャスターの方でいえば、直接その方は御自分の認識の中でコメントもされるわけで、そのやりとりの場そのもの、そのやりとりの内容、ともすれば相手方は当然プレッシャーを感じることは容易に想像がつくわけでありまして、やはり私は、そういう部分については、今、放送法の運用をこれだけ報じられている中で、自制を持ってお取り組みいただくことが必要ではないかという認識なんです。そこでそういうことをお伺いしたんですね。  それで、実はこの報道の圧力、場合によってはコメンテーターを含めて言論の圧力という見方がこれだけ報じられるに当たって、自民党の中で、そういう文書を出されたり、あるいは今回、テレビ朝日やNHKの幹部を呼び出されて対応を聴取された方々一人一人に、もっと言うと菅官房長官にも、私は、残念ながらその認識が欠けていると言わざるを得ないのは、皆さんそれぞれ、そんな圧力をかけているというつもりもない、認識もない、事実もないということをおっしゃるんですが、実際、さまざまな外形的な状況、データを見ますと、これはもう圧力がかかっていると言われても仕方がない現実があるのではないかと思うんですね。  これは、テレビ朝日に関して言えば、番組の関係者の人事、あるいは、古賀さんだけではなくて、これまでもいろいろな番組のコメンテーターの方が突然出演しなくなる。あるいは、そもそも、番組のプロデューサーがそういうキャスティングについては一任されていたのが、局の幹部が許可をしなければコメンテーターの人選もできない。批判的な方がだんだんと、この四月の改編以降も、御本人たちの発言、出られなくなっている、出なくなっている。あるいは、二〇一二年選挙と昨年末選挙の選挙報道を比較すると、四割程度も減少してしまっている。  実際にそういう面での報道の自粛というのは既に今起こっていて、その起こっていることに対して、いや、そんな認識はない、事実はないというのは、私は、これだけの巨大与党の権力を行使されるという意味においての自覚が余りにも欠けているのではないかと。場合によっては、無責任なそういう認識でそういうことをされるようでは、これは報道や言論の自由のみならず、ひいては国民の知る権利も制限されていくことになりかねないか、そういうふうに思っておるわけであります。  御本人方の認識ではなくて、実際の報道機関や言論の場のコメンテーター、もっと言うと、この国会での質問についても、戦争法案という言い方に対してのさまざまな議論も含めて、今本当にいろいろな危惧、懸念がされているわけでありまして、ここは、少し真摯に謙虚に、これまでの報道や言論の自由に対するあり方に対して御認識を改めていただきたいと思うんですが、長官、いかがですか。 ○菅国務大臣 委員が何を言われたいのか、私はよくわからないんです。私は、そうした人事に関して、一言も言ったことはないですよ。そして、メーンのキャスターの方と私は会ったこともない。それは、先ほど申し上げましたけれども、かつてそうした人たちが政治部長のときに、何人かで集まる会に逆に私は呼ばれて行くわけですから。  そういう中で、その人事が行われたという、そことどうして、何も関係ない私がそれに関与しているようなということは、それは言い過ぎだというふうに私は思います。 ○柚木委員 長官、ぜひ注意深くお聞きをいただきたいと思うんですね。私は、人事に直接関与をしたとか一言も申していないんです。もっと言うと、関与していないにしても、そんたくという言葉はよく御存じですよね。報道の現場が、あるいは後ろにいらっしゃる役所の皆さんもそうですよ。(発言する者あり)いや、悪意じゃないですよ。やはり、相手があってのことですよ。相手がどう認識をするかを謙虚に真摯に向き合う、今、野党、与党、求められているんじゃないですか。  相手がどう認識するかにも思いをはせていただいて、いろいろな報道関係者と、どういう場面であれ、会われる、あるいは自民党さんの方で局の幹部を呼び出される、あすは我が身だと、他局、新聞も思っているわけですよ。これは、現場の記者からも幹部からも、私は取材していますよ。勝手に私が思っているんじゃないんですよ。そう思っているんですよ、報道現場が。  そういうことに対して、やはりより真摯に謙虚に向き合うべきじゃないかということを申し上げているわけであって、長官が直接、報道ステーションの人事に介入したら、とんでもないことですよ、それは。そんなことを言っているんじゃないんですよ。その認識を政府・与党、それぞれお持ちいただくべきじゃないですかということを申し上げているんですよ。  さらに私も調べていくと、例えば、もう皆さんもよく御存じの、いわゆる世界報道自由度ランキング、これはまさに新聞各紙も取り上げますよね。ワールド・プレス・フリーダム・インデックス。これも、私もちょっと驚きましたけれども、ちょうど民主党政権のとき、十一位。十一位がいいか悪いかはありますよ。しかし、第二次安倍政権になって、二〇一五年段階で六十一位。五十位も順位が急降下している。  しかも、私も本当にこんなことになっているのかと思ったのは、日本の外国特派員協会、FCCJが、二〇一五年、報道の自由推進賞というものをわざわざ新設して、世界報道の自由の日となることしの五月三日、我が国でいえばある意味最も大事な日ですよね、この日に報道の自由推進賞というものを発表している。世界の目から見ても、あるいは順位から見ても、我が国の報道の自由、言論の自由というものが今大変な危惧、懸念をされている状況にある。  そして、先ほど申し上げたように、相手があっての話ですから、自分はそんな認識はないんだ、事実もないんだといっても、相手がそれを感じ取って、そのことを、人事も含めて、コメンテーターの人選も含めて対応してしまうことまで、いや、それは自分たちは関与していないんだ、そういう姿勢で、世界が、まさに二〇二〇年東京オリンピック、あるいは、国内においても、あしたから安保法制の本会議での議論が始まるというふうに聞いていますけれども、国民の皆さん、直近の世論調査でも、安保法制でも、二〇ポイント以上、反対、今国会での成立も反対の方が多いわけですよね。  そういう状況の中で、安保法制だって、報道を通じて国民の皆さんに伝わっていくわけですよね。本当にきっちりと報道されて、国民の皆さんが正確に客観的に判断ができる、報じられるのか、そういう懸念もある中で、私はあえてきょうこういう質問をせざるを得ない。そのことは、非常に私は残念だし、危惧していますよ。  官房長官、今、そういう世界の報道自由度ランキング、あるいは、新たに外国特派員協会が報道の自由推進賞なんかを創設してまで我が国の報道の自由に懸念を示していること、これも踏まえて、やはりここは謙虚に真摯に、報道や言論の自由に対する認識をもう一度見直していただきたいと思うんですが、いかがですか、官房長官。 ○菅国務大臣 我が国は、放送法によって、まさに報道の自由、また、憲法によっても報道の自由ということは保障されているわけでありますから、私は、日本の報道が極めて制約されているというふうには思っておりません。いろいろな、例えば、安倍総理を毎日批判しているような新聞紙、これは夕刊紙等もありますけれども、そうしたことに対しても、現実的にそうしたことが行われているんじゃないでしょうか。  ただ、テレビについては、放送法に基づいて、そこはしっかりと定められておるわけでありますから、そういう中でやはり報道していくということが、ある意味で、私は当然のことだというふうに思っています。 ○柚木委員 やはり相手があっての話、報道現場、あるいは言論の自由、コメンテーターの方も含めて、もう少しそちらの立場、その先には視聴者、読者、国民の方々がいるわけですから、真摯に向き合っていただきたいと思いますよ。  一点、ここで一遍法務大臣に伺って、もう一遍長官にこのことも含めて認識を伺いたいんです。  今私ども、法務委員会にも所属しておりまして、刑事訴訟法、いよいよ今週から審議に入っていくという大きな流れだと思いますが、この中には、これまでの法制審の議論の中、あるいは、我々の政権のときの流れとはまた違う、懸念せざるを得ない流れも出てきている。例えば、盗聴法あるいは司法取引、こういったものが、可視化という、冤罪を生み出さない、村木さんの件も含めて、そういう反省のもとに、そういう議論の方向感の中で、ある意味、あめとむちのような形で出てきている。  この盗聴法なんかは、この間の法務委員会でも大臣がやりとりされていましたけれども、これは本当に令状主義、司法チェックが全く機能しないような、ほぼ一〇〇%令状も出るし、そういう中で、報道や言論の自由に対しても大変な危惧。これはまさに、当時の通信傍受法、盗聴法が議論をされたときも、日をまたいでの大変な大議論、強行採決になった部分も含めて。その盗聴の対象範囲が、これまでのいわゆる四類型から一般犯罪にまで拡大をされて、通信事業者の方の同席はなくなって、そして、犯罪に無関係なものを大量に傍受しても、この間、きょう刑事局長がいますけれども、後で取り消せばいいんだというぐらいの認識ですよ、消去すれば。  これは本当に、まさに報道の自由に関しても、取材源の秘匿、もっと言うと、我々政治家と記者の方々がやりとりしていても、私なんかは文科委員会でも、大変残念ですが、今回大臣の、刑事告発されて、受理されて、今地検の特捜部が捜査していますが、政治資金規正法違反の問題とかやりとりしますよ。現場の記者たちはどう言っているか。これは盗聴されていませんよね、いつもと音が違うと。それぐらい今デリケートになっているんですよ。そういう中で、今回、盗聴法の改正。  法務大臣、本当にこれで報道の自由は守られるんですか、こんな状況で。 ○上川国務大臣 今回、通信傍受法の改正も含めまして、刑事訴訟法の手続に係る厳正厳格な捜査、公判を通じて国民の皆さんに司法の適正性ということについて信頼をしていただくという、そうした背景の中でお願いをしているところでございます。  今回御指摘のところでございますが、通信傍受法の方に、対象犯罪が拡大するでありますとか、立会人を一部設けなくてもいい形でのあり方についても御議論いただく、さまざまな改正の案を御提示させていただいているところでありますが、あくまで、厳正にかつ適正にそれぞれの制度が運用することができ、また、公判におきましてもそのことを通して真実の究明がしっかり図ることができるようにしていくという趣旨にのっとった改正案になっているということでございます。  さまざまな御議論を、また法務委員会の中でも、ぜひともお願いしたいというふうに思っております。 ○柚木委員 今、ちょうど法務委員会でやりとりされている清水委員もここにおられますよ。私、この間の審議を聞いていても、大臣、そんな楽観的な、もっと言えば無責任な見方をしていて大丈夫ですか。  まさに報道も、現場がどう受けとめるか。私が申し上げましたのは事実ですよ。もう私と記者との会話ですら心配していますよ、現場の記者は。そういう状況の中で、今後、この盗聴法についても委員会での議論に入っていくという流れにあるわけです。  この間、安倍政権になって、もちろん安保法制、あした以降、本当に七十年の大転換になり得るような議論ですけれども、それ以外にも、例えば特定秘密保護法、これも共謀罪の先取り、司法取引のような内容も含まれている。そして、今回の、報道と今回の関係でいえば、相手方にとっては放送法の恣意的な解釈、運用、実際に圧力を感じている。皆さんがどう思っているかは別問題なんです。  そして、盗聴法。もっと言うと、今後、司法取引も、アメリカと違って自分の罪を認めて減刑を求めるんじゃないですよね、他人の罪を、ある意味、人を売って自分を助けようとするという形が今回の司法取引、我が国で初めて導入をされようとしている。そして、共謀罪についても、これまで何度も廃案になったものがまた出てくる。  こういう特定秘密、盗聴法、司法取引、そして共謀罪、さらに今、放送法の恣意的な解釈、運用について私は議論せざるを得ない状況があると思っていますが、こういったものが合わさると、本当にあしたからの安保法制の議論も大丈夫かなと。一億総監視社会、密告社会、報道は萎縮する社会、盗聴自由化社会、こういうふうになっていくんじゃないかと私は本当に心配していますよ。  だからこそ、政府の中で、本当に官房長官がまさに安倍政権のかなめとしてこの間尽力されてこられているわけですが、私は、やはり、先ほど海外からの報道の自由度のことも申し上げましたが、世界の国々から、ちゃんと報道や言論の自由が守られ保たれている中でさまざまな懸案に対して対処していく、議論をしていくという姿勢であればまだしも、そういう報道や言論の自由に対しては、少なくとも現場は圧力を感じている。そういう状況の中で、盗聴法の議論も始まる、司法取引も始まる。安保法制の議論は本当に大丈夫なのか、そういうふうに思わざるを得ないんですよ。  官房長官、ちなみに、例えば日本版NSCや内閣情報調査室、これは内閣、内閣官房の所管。盗聴法が仮に成立すると、このNSCや内調などでは、例えば盗聴法の枠組みだと、さっき申し上げたように、四類型から一般犯罪まで盗聴対象を拡大、NTT事業者は立ち会わなくてもいい、そして、盗聴した相手に対して、その盗聴内容が全く違法なものでなくても、この間清水さんがやりとりしたとおりですよ、全く違法性がないことを、例えば九十日間、三千時間ぐらい盗聴して、いや、問題はなかった、後から消去するからいいんですと局長は答弁されましたが、そういう対象に、例えば報道機関、記者、あるいは我々政治家、NSCとかあるいは内調とかでは対象になるんですか、盗聴法が成立したら。あるいは今でもなっているんですか。NSCや内調の話ですよ。今でもなっているんですか。 ○上川国務大臣 平成十一年に通信傍受法が御議論をなされた折にも、そうした御指摘が多々あったというふうに承っております。その国会答弁及びその後の通達によりまして、報道機関が使用している電話は原則として傍受の実施の対象とはしないということでございます。  たまたま被疑者の方が使用している電話に報道機関の方が電話をかけてきた場合に、それが取材のための通信であることが判明をするということになりましたら、直ちにその傍受はとめなければならない、こうした内容になっておりますので、報道機関の取材活動そのものを通信傍受の対象とするということにつきましては想定をされていないということでございます。 ○柚木委員 今、清水さんからちょっと声がありましたけれども、そもそも第三者機関等がしっかりチェックをする体制になっていません、日本は。国会に報告していますけれども、その事案、具体的にどういう事案なのかわかりません、どういう事件なのか。  そして、今、たまたまというところがポイントなんですけれども、官房長官、本当にぜひ、ドイツのメルケル首相がCIAからの盗聴とか、いろいろな、世界的にも盗聴の、日本もその対象になる。安倍さんはされていないという御答弁ありましたけれども、日本も対象になっている。そういうことで、今、本当に世界の中でもこういうあり方でいいのかというのが議論になっている中で、我が国が逆に、盗聴自由化、盗聴天国のような流れになっていくということが、東京オリンピックも控えている中で、もっと言うと、かつて緒方事件もありましたよ。政党の幹部役員、これは裁判では認められているのに、いまだに政府の、警察庁とか認めていない、こういう矛盾。  私は、これは本当に報道や言論の自由は大丈夫なのかと、国民の皆さん、これから安保法制の議論も始まっていく中で、心配されていると思いますよ。  長官の会見の時間がありますので、私、最後に一つ、ぜひお願いを申し上げたいんですよ。  こういう状況が進めば、本当に私はいつか来た道を戻っていきかねないと思いますよ。我々が誰よりもそういう部分を早く察知して、歯どめをかける役割を果たさなきゃいけない。これは与野党共通していると思いますよ。  ぜひ、今回放送法の、後ほど法務大臣にもお尋ねしますが、この恣意的な運用について、私は、放送局の独立性を担保するために、中立的な機関、これはBPOのことも聞きますよ、そういう体制にしていくべきだと思いますし、やはり刑訴法の中の、盗聴法や司法取引、放送法、そして秘密保護法、共謀罪、こういうものと相まって、非常に報道や言論の自由が損なわれていくという部分についてはぜひ認識をいただいて、閣法の法案提出権は官房長官が窓口でいらっしゃいますから。  最後、安保法制。あしたから本会議で審議に入るかもしれません。最後に伺いたいのはこのことなんですよ。  私、びっくりしたのは、自民党の国対委員長さんが、強行採決は状況次第と日経新聞のインタビューに答えているんですね。とんでもない話ですよ。まだ審議入りしていない。ぜひ官房長官、政府の法案提出の責任者として、この国会中とか夏までとか、反対が二〇ポイント以上多いんですよ。そういう、この国会、夏までとかいうようなスタンスで臨まないんだ、国民の皆さんにちゃんと説明を尽くすんだ、そういうことを最後に御答弁いただけませんか。 ○菅国務大臣 政府の責任というのは、国民の生命、自由、また財産も含めて、守ることに政府の責任があるわけであります。  そういう中で、今回、閣議決定をして国会に法案を提出させていただきました。国会でぜひさまざまな問題にしっかりと御議論をいただいて、そこは国会に判断を委ねるのが政府の立場であります。 ○柚木委員 少なくとも期限を区切っての強行採決、そういうものはやらないんだという認識を、丁寧な議論をやるんだということを、私は今、そういう姿勢で臨むというふうに認識を述べていただいたと思いますが、これは今後も、さまざまな機会を通じて、関係閣僚の皆さんともやりとりをさせていただいてまいりますので、そのことを強く求めて、会見は四十五分からですよね、御退室をいただければと思います。長官、ありがとうございました。  続いて、法務大臣、今長官が御退室になられる前に少し私は申し上げたんですが、放送法、当然、この間、官房長官もですけれども述べられているように、報道の自由、自律性、そして他方で、報道の公平性、客観性、それぞれについて述べられているわけであります。  しかし、今本当に私が大事だと思うのは、やはり、これだけ実際の報道現場で、現場の記者や局の幹部、私もこういうことを伺うからには、それぞれ話を聞いております。受け手があっての話ですよ。受け手があっての、現場の。その先には視聴者・国民がいる。そういう中で、私は、やはり放送法自体が、五年ごとに国が、総務相がその放送の許認可権を有している、そういう部分も含めて、私は、やはりこれは、アメリカ、イギリスなども同様に、独立した、あるいは中立的な機関がそういう許認可権についても有するべく、放送法、電波法を改正するということの方が、むしろ皆さんの、そういう報道の現場や国民から見た懸念、疑念を持たれずに済むと思うんですよ。  放送法の改正をそういう視点で御議論をいただけるという認識、総務大臣、ございませんか。 ○高市国務大臣 まず、先ほどから委員がおっしゃっているさまざまなことがございます。あたかも、政府・与党の方から、放送現場に対して圧力をかけているといった前提に立っての御質問でございますけれども、例えば安全保障法制、これに対する世論調査の結果、きのう一部発表されているのを私も見ました。非常に、今、世論調査が政府・与党にとっては厳しい結果になっている。これはやはり、私は報道が自由に国民にさまざまなことをお伝えしている、決して政権寄りの報道じゃないことの一つの証左だと思って見ておりました。  また、そんたくをしているんじゃないかというお話もございましたけれども、私は、放送人、ジャーナリストにはしっかりした矜持があると思っております。政府においても、与党においても、まず憲法に定める表現の自由、報道の自由、さらには放送法に定める放送番組編集の自由を最大限尊重するということは当然のことでございますし、放送事業者におかれましては、やはり放送法の規定にあるとおり、三条、「何人からも干渉され、又は規律されることがない。」という前提に立って、しかしながら、その自由が保障されているのはなぜかというと、政治的に公平であり、報道は真実を曲げない、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする、四条に定められているような原則に立って、自律的に放送番組を編集する、こういう前提があるわけでございますので、ちょっと委員がおっしゃったことについて、私と前提となる考え方が違います。  第三者委員会または独立委員会を設けるべきではないかということですけれども、我が国は、日本国憲法の第五章内閣におきまして、内閣に行政権の主体としての地位を認めております。そして議院内閣制でございます。ですから、内閣の一員である各省の大臣が、責任を持って、それぞれの所管する分野の行政を執行するということになっております。  また、放送における表現の自由は、日本国憲法第二十一条及び放送法第三条によって担保されておりますし、また放送法第四条などによりまして、先ほど申し上げましたが、放送事業者の自主的な規律によって放送番組の適正を図るという仕組みになっております。ですから、総務大臣が責任を持って放送行政を執行する現行の体制が不適当なものであるとは考えておりませんし、独立の行政委員会を設ける必要はないと思っております。  戦後、我が国において行政委員会を広く導入された時期があったんですが、責任の所在が不明確であるなどの理由によりまして、昭和二十七年以降その多くが廃止されてしまったという経緯がございます。 ○柚木委員 総務大臣、認識の違いでは済まされないんですよ、認識の違いでは。  安倍総理が予算委員会で、きょうおられますけれども、細野委員とのやりとりだったと思いますが、自分にも言論の自由があるんだと。それは、ジャーナリストや記者に矜持があって当たり前ですよ。当たり前ですよ、そんなもの。それを権力側は、では、何のために立憲主義、放送法三条も今触れられましたけれども、そういうものがあるのか。それが今脅かされている、侵されているという認識があるからこそ問わざるを得なくて聞いたら、私にも言論の自由があるんだと。総理大臣ですよ。(発言する者あり)今のようなやじが飛ぶことが私は問題だと思っているんですよ。  総理大臣が、もちろんいろいろな場面で御自分の考えを述べられる場面はあっていいですよ。しかし、今放送法の運用も、本当に私は懸念していますよ。皆さん地元で、この週末も回っているでしょう、私も運動会を回りましたけれども。平和のこととか報道のこととか、みんな心配していますよ。心配しているんですよ、国民の皆さんも。だから取り上げざるを得ないんですよ。認識の違いでは済まされないんですよ。  これは、私、もっと心配なのは、やはり、私は独立的な、中立的な機関を設けるべきだと思うし、BPOに対しても政府が関与する、あり得ないですよ。これは、本当にそんなことをやっていたら、報道の自由ランキングどころじゃなくて、二〇二〇年にオリンピックをやるんでしょう、恥ずかしいですよ、本当に。  ぜひ大臣、今、放送法改正とか第三者機関の認識はないと言われましたから、では、せめてBPOまで政府の関与下に置くというようなことは、これは本当に慎んでいただきたいと思いますけれども、総務大臣、御答弁いただけますか。 ○高市国務大臣 まず、BPOまで政府の関与下に置くなどという事実はございません。  それから、世界の国々が日本の放送の自由度のランキングが低いと考えている、そういう印象を与える発言をされましたけれども、世界報道自由度ランキング、これは、国境なき記者団、パリで設立されましたジャーナリストのNGOが発表したものであります。  ジャーナリストがそう思っているかもしれないということでございますけれども、日本国におきましてはしっかりと、放送行政に係る規律の制定、改廃に当たりましては国会で、特に法律の制定や改正は国会で御審議をいただくということは当然ですし、省令などの下位法令の制定、改廃につきましても、総務省ではちゃんと、パブリックコメントを通じて国民の皆様から意見を聴取した上で、電波監理審議会に諮問をして、その答申を踏まえて最終的な意思決定を行っております。  委員がおっしゃるような形の、BPOにも関与する、こういった形で総務省が偏った行政を行ったことはございません。 ○柚木委員 では、ぜひ四ページ目の資料を。  四ページ目の資料、「BPOに政府関与検討」、これはうそなんですね。これは、「放送局から独立」ではないでしょう、政府・与党から独立、政治から独立をでしょう。関与ないと言ったんだから、そういうふうな形で今後私は議論を注視していますよ。  もう時間がないので、あと、法務大臣、これはぜひお聞きしたいんですけれども、盗聴法も大問題ですけれども、司法取引もこれは本当に大問題ですね。先ほどアメリカとの違いを申し上げましたけれども、自分の罪を認めていろいろな形のやりとりというのはあっても、私もなるほどなと思うところもないわけじゃないですけれども、人のことを陥れて自分の罪が軽くなるような、これは本当にモラルハザードが蔓延しますよ。  テロ対策とかいろいろなことは必要ですよ。だけれども、私は一点伺いたいのは、美濃加茂市長さんが三月に無罪判決を受けていますけれども、あれもまさに司法取引が問題になって、これは、首長とか、議員の皆さんだって本当にこのままいくと例外じゃないですよ。  司法取引、これは、私も確かに、文科委員会で大臣の政治資金規正法違反のことを追及させていただきました。刑事告発されて、受理されて今捜査が進んでいる。捜査の過程の中で、逆に私は心配しちゃいますよ。関係者、司法取引とかになっちゃったら、下村さんはちょっと私の中では政治資金規正法違反だという認識を持っていますが、しかし、今後そういう対象になったときに、議員とか首長とかは司法取引の対象になるんですか。法務大臣、いかがですか。 ○上川国務大臣 今委員からお触れになりました具体的な事例ということでございまして、それに関連した御質問ということになりますと、なかなか、答弁をすることを差し控えなければいけないということでございますが、合意制度そのものを今回の刑事訴訟法の対象に加えさせていただき、そして、真相の究明に資するという中で捜査の多様化を図ることができるような、ぎりぎりの手法という形の中で今回提案をさせていただき、御審議を仰ぐということでございますので、そうした捜査の適正化、そして公判の中で、大変的確な公判ができるように、こうした趣旨にのっとった形で、極めて限定的に、なおかつ厳正な手続の中で実行をしていくという趣旨の中で御議論をいただきたいというふうに思っております。 ○柚木委員 時間が来たので終わりますが、これは本当に政治家は自分で自分の首を絞めることになりかねませんよ。本当にこれは注意してやっていただかないと、一億総密告社会になりかねませんよ。自分が人を売れば罪が軽くなるんですから。これは……(発言する者あり)そういう、認識が甘いんですよ。現場で何が起こっているか、私も取材して言っているんですから。  ぜひ、そういう部分をこれから議論させていただきますが、今回、私は本当なら汚染水対策、これも全然、我々がいろいろな形で指摘、要求したことになっていない。そういう議論をしたかったですよ。  今の予備費、賛成できないという認識でいますよ。でも、それ以上に、今の目の前の大きな、あした以降の流れも含めて、このままでいいのかという本当に強い危機感をお伝え申し上げて、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。