第189回国会 法務委員会 第24号 平成27年6月16日 ○柚木委員 民主党の柚木道義でございます。  引き続きよろしくお願いいたします。  本日は、可視化はもとより、この間、この委員会でそれぞれの委員の皆様が質疑されている部分もあろうかと思いますが、いわゆる捜査手法の拡大といいますか拡充、もちろん、真犯人を検挙し、しっかりと法的な対応をとることは必要なんですが、ただ、その視点のみで本当に大丈夫なのかという観点から、例えばGPSでありましたり、あるいは防犯カメラ、Nシステムなど、そういった個別の項目についても伺いたいと思っておりますし、また、通信傍受についても何点か伺いたいと思います。  それで、ちょっと順番を、きょう報道も出ておったものですから、防犯カメラ、これは新たな捜査手法として報道等でも取り上げられることも多いんですが、きょう資料としてまずおつけしておきましたのは、七ページに、いわゆる歌舞伎町事件とも言われる二〇〇九年四月十八日の事案でございまして、これは皆さんよく御存じの新宿歌舞伎町、ここで、警察官多数と被告人の仲間多数とで混乱状態になりまして、応援に駆けつけた警察官に対し被告人が暴力を振るったとされた公務執行妨害事件であります。被告人は、暴行を振るった事実はなく、逆に警官に投げ飛ばされたと主張し、真っ向から主張が対立をしておった事案でございます。  これは、警視庁の街頭防犯カメラシステムの設置の草分け的な地域で、現場のいわゆるコマ劇とよく言われるあの付近は、皆さん御存じだと思いますが、当然、複数の防犯カメラが設置をされていて、その監視範囲内でございます。これを確認すれば双方の主張のどちらが正しいかというのは明確になると思われるわけですが、警察、検察が録画映像を証拠提出したが、肝心の、被告が警官に暴力を振るったとされる時間の映像が約三十八秒間欠落をしていたということであります。これは本件犯行立証には不必要であるとか、プライバシーに係る映像が映っていたとかの理由で該当部分のみ消去したとの弁明が警察から行われたということですが、裁判ではこの弁明は一切認められず、犯罪の証明がないことによって、一審有罪判決破棄、無罪言い渡しということでありました。  こういうようなことでありますと、防犯カメラ映像というのが真実を明らかにするものではなくて、むしろ、警察が利用したいときに利用したい形で利用する、こういう疑念が国民の皆様の中にも深まるわけでございます。  そういった点についてもちょっとお聞きしようと思っていた中で、これはけさの報道で、国と府に賠償命令を求めた訴訟の判決で、大阪地裁が両者に計六百二十一万円の支払いを命じたという判決がありました。実は、この事案というのは、堺市のガソリンスタンドで盗難品の給油カードを使ったガソリンの窃盗事件が発生して、被疑者とされた男性のカードの使用時刻が記された納品書や防犯カメラの画像などに基づいて逮捕、起訴されたんですが、弁護側が画像の時刻が実際と十二分のずれがあることを指摘してアリバイが確認された。釈放までの勾留期間は八十五日だったということですが、それぞれ検察、警察に対して、捜査手法の不適正な内容について判決でも指摘をされております。  本当にこういうことが重なると、今回のまさに可視化、そして他方で、通信傍受や司法取引や、さまざまな捜査手法の拡充、そのツールとして、私はきょう幾つか、GPSや防犯カメラ、Nシステムなども例示しながら、もちろん犯人検挙は最重要ですし、その結果の法的な対応がとられることというのは最も重要とされることでございますが、他方で、だからといって、今紹介したような歌舞伎町の事件のような、あるいは、けさ報道されていますような大阪地裁でこういった賠償命令がなされるようなことであっては、これは本当に国民の皆さん、一体自分たちは守られるのか、そもそも冤罪のリスクを負うことになるだけなのか、そういう不安が広がってしまうわけでございます。  国家公安委員長、私は、これまでの質疑の中でも、このような、いわば誤認逮捕とか、あるいは冤罪が起こったことに対して、以前も志布志事件の際にも幾つか認識を確認させていただいたわけですが、今回、まず、この大阪地裁の賠償命令なんですが、これは、警察の取り調べ官によって、誤認逮捕であったにもかかわらず、汚れた手で子供の頭をなでるのかとか、悪人でいくのかとか、さまざまないわば暴言も違法とされて、さらには、防犯カメラの画像の時刻を確認しなかった点など、本当に著しく、捜査水準が、注意義務を怠っているじゃないか、こういう判決がなされているわけです。  これは、当該警察署長や地検の支部長が男性に謝罪をしておりますが、国家公安委員長としては、今回の事件に対して、事案に対してどういうふうに認識されておられますか。 ○山谷国務大臣 お尋ねの事案でございますが、平成二十五年四月、窃盗容疑で逮捕、勾留した男性がその後の捜査により犯人ではなかったことが明らかとなったものでございます。また、本事案に係る国家賠償請求訴訟の判決では、捜査の違法が指摘されまして、大阪府等に対し賠償が命じられたものでございます。  もとより、犯人でない方を犯人と誤認して逮捕するようなことはあってはならないことでありまして、この種事案の再発防止を図るために、引き続き、緻密かつ適正な捜査が推進されるように警察を指導してまいりたいと考えております。 ○柚木委員 警察を指導していただくことは当然なんですが、この方は、そういう取り調べ、誤認逮捕を受けて心身ともに非常に体調を崩し、そういう中での賠償命令なわけですが、国家公安委員長としては、その方への謝罪の気持ちはおありですか。 ○山谷国務大臣 まことに遺憾に思います。  この種事案の再発防止を図るために、引き続き、緻密かつ適正な捜査が推進されますように警察を指導してまいりたいと思います。 ○柚木委員 これは検察に対しても、今回の事案に対しては、防犯カメラと来店履歴管理システムの時刻のずれを十分認識できたのに看過し、男性の話した内容が本当かどうかも確認しなかったとして、起訴自体を違法としたということであります。  法務大臣、同様に、今回の事案について、認識をどういうふうに持たれていますか。 ○上川国務大臣 昨日、大阪地裁におきまして御指摘の判決が言い渡されたということでございます。  この問題につきましては、取り調べに係る適正性ということについて問題があったということでございます。あってはならないことが起きてしまったというふうに考えているところでございます。 ○柚木委員 起きてしまっただけではなくて、先ほどおっしゃられたように実害ですね、本当に心身ともにそういった賠償命令が出るような状況ですし、当然想像がつきますよね、社会的にどういう影響が出ているか、こういうことがやはり起こるんですよ。  そういった中で、私がもともと通告をしておりましたのは、警察設置のいわゆる防犯カメラ、もちろん民間設置のものもあります、そういう防犯カメラの設置台数、そもそもどの程度設置をされているのか、それから画像データの捜査利用及び管理規則はどうなっているのか、その点についてまず簡潔に御答弁をお願いします。 ○辻政府参考人 お答え申し上げます。  警察で設置した街頭防犯カメラについては、平成二十六年三月末現在、二十一都道府県で千百六十五台でございます。  街頭防犯カメラを設置している都道府県警察においては、プライバシーの保護に十分配慮する観点から、管理運用に関する規程等を策定して、録画画像の保存期間や管理方法を定めるなどにより、適正な管理運用を図っているところでございます。画像データの捜査利用につきましては、法令及び管理運用に関する規程等の定めるところに従って適正に行っているところでございます。 ○柚木委員 当然そういう答弁になるんですね、適正な管理運用を法令に従ってと。ただ、その部分自体も本当にそれで大丈夫なのかという疑念が常につきまとうわけですね。  この後、一つ一つ質問してまいりますが、今、防犯カメラの設置台数について、それから捜査利用の管理規則についてお尋ねしたんですが、同時に、Nシステムと言われるいわゆる自動車ナンバーの自動読み取り装置でございますが、この設置台数と画像データの捜査利用及び管理規則についても御答弁お願いします。 ○三浦政府参考人 平成二十七年五月末日現在、警察庁が設置している自動車ナンバー自動読み取り装置、いわゆるNシステムの設置台数は千五百十一式でありまして、これと同じ仕様の装置を都道府県が百七十九式設置しております。  自動車ナンバー自動読み取り装置で取得した通過車両データの取り扱いにつきましては、手配車両のナンバー登録、手配車両のナンバーと一致した場合の警報出力、データの保管及び消去、データの安全管理等のルールを定めた自動車ナンバー自動読取照合業務実施要領及び通過車両データ活用要領を警察庁から各都道府県警察に対して発出しているところでございます。 ○柚木委員 資料の八にちょっと報道をおつけしておるわけですが、警察庁は、このNシステムで収集したデータ情報や解析報告書を秘匿するために、裁判における証拠開示請求が行われないよう、取り調べの対象容疑者らにデータ記録を直接示すことを禁ずるなど、全国の警察に指示、最高検も同様に、Nシステムの収集データの証拠化を警察に求めず、取り調べ対象者がデータの存在や内容に気づくような受け答えを禁止する旨の指導を全検察官に行ったと報道されております。  これは、検察、警察の認識、姿勢はそのとおりなんですか、現在も。それぞれ警察庁、法務省、お答えください。 ○三浦政府参考人 自動車ナンバー自動読み取りシステムにつきましては、設置場所等が明らかになれば今後の捜査に重大な支障が生ずるおそれがあるため、警察庁は、従前から、都道府県警察に対し、具体的事件での運用状況等について保秘を徹底するよう指導を行っているところでありまして、このことは現在においても同様であります。 ○林政府参考人 警察庁がいわゆるNシステムに関する保秘の徹底を指導したということを承知しておるわけでございますが、その趣旨は、Nシステムの設置場所等が明らかになると、犯罪を企図する者が対抗措置を講じるなどしてNシステムの機能が損なわれるおそれがあるため、そのようなことのないように留意すべき事項を指導したものであると理解しております。  最高検察庁は、そうした警察庁の指導を踏まえまして、検察官に対して、その指導の内容を伝えて、それに対する配慮を求めたものであると承知しております。この点に関する対応については、現在も同様であろうと考えております。 ○柚木委員 それぞれ警察庁、法務省の御答弁は、真犯人を検挙してそして法的な対応をとる、そういう観点はもちろん必要なんですが、決定的に抜け落ちている、欠落をしているのは、これは通信傍受法もそうですが、プライバシーや人権侵害の問題、私は、全く今の答弁からは配慮を感じられないわけであります、残念ながら。  ですから、あらゆる技術を用いて捜査を有効に進める一方で、先ほど私がそれぞれ紹介をしました、いわゆる冤罪というか誤認逮捕、こういったようなことが起こってしまうような運用が実際になされてしまう、事実としてこういうことも起こっている、こういったことがあるわけでございます。  さらに、先ほども少し申し上げましたが、警察が設置している以外の防犯カメラ、これが全国に三百万台とも四百万台とも言われておるわけであります。私も必要ないとは言いません。銀行とかコンビニとか商店街の街頭等、もちろん犯罪への抑止効果等もあるかと思います。  では、その民間設置の防犯カメラについて、画像データの捜査利用規則は実際どうなっているんでしょうか。 ○三浦政府参考人 警察では、民間等が設置、管理する防犯カメラ画像を捜査目的で利用するに際しては、刑事訴訟法第百九十七条に基づき、管理者等の協力を得て入手をしておりまして、収集した防犯カメラ画像は、証拠物件または捜査資料として適切に管理をしているところであります。  なお、管理者等の承諾が得られない場合において必要があるときは、裁判官の発する令状により、防犯カメラ画像データを差し押さえることもございます。  こうして犯罪捜査で証拠物件または捜査資料として収集をした防犯カメラ画像は、刑事訴訟法、犯罪捜査規範等に基づいて紛失等がないよう組織的に管理を行い、証拠物件については検察官に対する送致または還付、捜査資料については捜査の遂行に必要がなくなったときは廃棄または消去をすることとしているところであります。 ○柚木委員 今の御答弁もそうですし、これまでのやりとりもそうなんですが、要は、実際には、違法性がないようなさまざまな我々の市民生活の部分についてもカメラで撮影をされて、その部分については最終的には消去するからいいんだ、そういうふうにどうしても聞こえてしまうわけですね。  これは、そもそも、そういう傍受にしても、あるいはカメラの画像データにしても、実際に全ての人に通知をするというのは困難な部分も承知をしますが、他方で、そういう監視をされているという自覚もないままに、さまざまなプライバシーの問題等も含めて整理をされないままに、なし崩し的にと言うと言葉はあれですが、いわばどんどん拡充されている部分については、この後、司法取引、可視化、あるいは通信傍受の話にもなっていくわけですが、やはり懸念を覚えざるを得ません。  そこで、私は、とりわけ今回、刑訴法の改正の中で、まず、通信傍受拡大についても、憲法違反とか人権侵害とかさまざまな指摘もある中で、捜査対象も拡充をして、他方で、歯どめになる部分については非常に心もとない。こういう状況の中で、いわばなし崩し的にどんどんそういう捜査手法の拡充を進めていくということだけではなくて、やはりプライバシーや人権問題、あるいは、私たち、自分自身の情報は自分自身が管理をする、そういう権利といいますか、知る権利であったり、もっと言うと消す権利とか訂正する権利とか、そういった幅広い観点を踏まえながら、例えば通信傍受、あるいは、ちょっとこの後GPSのことも触れますが、防犯カメラやNシステムなど、情報収集、管理とその捜査利用等についての法律のちゃんとした整備を含む統一的な考え方の取りまとめ、こういったものをきっちりと国民的議論を行うべき、そういうふうに思うわけですが、法務大臣、そういった私の考え方については、どのように受けとめていただけるでしょうか。 ○上川国務大臣 ただいま、委員の方から、捜査機関によりましてのさまざまな証拠収集の方法等について御質問がございました。  防犯カメラでありますとかGPSの位置情報取得、防犯カメラについて民間のものもあるというような御指摘でございましたけれども、いずれの収集方法につきましてもその性格がございます。その際、令状を要するか否かということを含めまして、先ほど御指摘いただきましたけれども、刑事訴訟法の法令にのっとる、そして適正に運用する、そういうことで規律を保つということであるというふうに思っております。  そうした御指摘については大変重要な視点であるというふうに思っているところでございますが、今、新たな法整備が現段階において必要かということを問われれば、現状におきましては、まさにそうしたことを勘案しながら、それぞれの収集方法の性格に応じて、令状主義を徹底するということを含めて、刑訴法の法令に基づいて適切に運用していくということが必要ではないかと考えております。 ○柚木委員 これまでもそうやって法令にのっとって捜査、取り調べを行ってきた中でさまざまな冤罪が起こり、さらに言えば、令状主義、これはこの後まさにGPSの質問をさせてもらいますが、これも本当に軽視をされて、まさに違法判断まで大阪地裁で今月五日に示されております。  ぜひここは、この後私もやりとりを深めさせていただきますので、その議論の中で、きっちりとした法的な体制整備を含む統一的な体系を整理いただくことが非常に重要ではないかと私は思います。  GPSの部分も、六ページ目に、これはこの委員会でも質問があったと思うんですが、「令状なしGPS違法 「捜査、人権侵害」」ということであります。  今、まさに先ほど質問した点の観点とも重複するんですが、私は二日の日に質疑を行わせていただきまして、九日の日には同僚の階委員からも大臣に質問があったと思うんですね。もともと、合法の判決例を根拠に、任意捜査として許容されるという姿勢でGPSの捜査をされてきた中で、今回、全く反対の判断が示されたわけでございます。  その示されたことによって、私はこの後他国のいろいろな取り組みも紹介させていただいた上でお尋ねしたいんですが、やはりこの段階で、一旦、捜査の姿勢に対しても立ちどまって考える、見直していただく。もちろん、事件は日々起こるわけですから、捜査等の対応をしなきゃいけないわけですが、このGPSの捜査のあり方については、私は、再検討をいただくことが必要だと思うんです。  これは、諸外国では令状に基づく捜査や事後通告を定める立法が進められている、こういう指摘もありますので、我が国でも、立法、GPSの捜査のあり方についてきっちりと法的な対応をこの国会においても検討すべきだと私は考えますが、大臣、お考えをお聞かせいただけますか。 ○上川国務大臣 捜査のためにGPS発信装置を自動車等に取りつけて位置情報を取得するということにつきまして、前回、六月の二日でございますけれども、任意捜査として行うことができると判断した裁判例があるということでお答えをさせていただきました。その後、六月の五日に、検証許可状によらなかった点に着目して、違法であると指摘された裁判がなされたということでございます。  今、まさに二つの裁判の結果ということで、そうした答弁をさせていただきますが、いずれの考え方によるべきかということにつきましては、やはり個別の具体的事例によることであるというふうに考えておりまして、一概に即断することができないということでございますが、いずれの裁判例によりましても、任意捜査として許容されるのか、あるいは検証として令状を要することとなるのかはともかく、捜査手法でございまして、現行の刑事訴訟法のもとで許容されるということについては、そのようなものであるというふうに考えております。 ○柚木委員 そういうふうにお考えだとしても、今回の判断、これは七月の十日ですか、判決が示されるということですが、やはり私自身は、今回の判断を踏まえて、アメリカでも、一二年に連邦最高裁で、令状を取得しないGPS捜査には違憲判決が出されたとか、いわば法規定のないまま、令状を得ずに要綱、要領だけで運用している実態を警察庁としても認めるということでありますが、やはりそういう運用方法は、まさに個別の事案ごとにどっちにも振れてしまうという見方もできるわけでありますので、そこは、今後の司法の判断も含めて、私は、しっかりとした立法府における検討を求めてまいりたいと思います。  それで、ちょっと質問を、通告どおりに戻りたいんですが、私は、この間ずっと、きょうは可視化のことも申し上げるんですが、通信傍受のあり方についてということで具体的な質問もさせていただいてまいりました。  これはこれまでの質問の続きということになるんですが、まず一つは、傍受令状請求が認められなかった一事件二件の却下理由の概要について、この間もやりとりをさせていただいてきているんですが、傍受令状は、資料の一にもつけておりますが、これはそれぞれまとめて各令状の裁判所による却下率ということで、逆に言うと、まさに九九%発行がされている、こういうことがこれによっても示されているわけであります。  私がこの間やりとりさせていただいた中で、例えば、最高裁におかれては、統計上、通信傍受令状についてのみ切り分けして集計していないので、却下理由は把握していないと。それから、上川大臣におかれましては、個別事件の捜査の具体的内容にかかわるということでお答えは差し控えたい、こういう答弁が多いんですね。  最高裁に対して、私はさらに、却下理由が傍受不適切判断によるのか、単なる書類の不備であったかとか、こういったことが全く示されないままでは、もちろん示されることによる弊害をお考えになられるんでしょうけれども、逆に言うと、全く示されないということであれば、いわゆる濫用防止機能がどういう形で作用しているかどうか検証できない、そういうことを申し上げておるわけでございます。  これは、立法府は行政府に対する監視機能を担っておるわけでございますから、傍受令状を発行されなかった理由の概要で結構ですので、傍受法改正に合わせてぜひ速やかにお示しをいただきたいと思いますが、最高裁刑事局長、答弁いただけますか。 ○平木最高裁判所長官代理者 前回、委員の御質問に対してお答え申し上げましたように、通信傍受令状の請求がどのような理由で却下されたかについては把握しておりません。  また、これも前回お答え申し上げたところでございますけれども、令状事務は、その性質上短時間で多くの事件を迅速に処理することが求められていることや、判断をした場合は直ちに記録を捜査機関に返還する必要があること、発付をしない理由についてもさまざまなものが想定されまして、定型化して集計することには困難な面があることなどがございます。  こうした令状事務の特性から考えますと、令状を発付しなかった理由に関して報告を求めることにつきましては、慎重に考える必要があるものと考えておるところでございます。 ○柚木委員 そういうお考えだと、先ほどのGPSの事例も令状主義の軽視だ、こういう指摘があるわけですが、全く令状主義が歯どめにならないんじゃないですか。そういうままで、なし崩し的に盗聴対象の拡大、そちらの方ばかりがどんどん拡充をされていく、そういうことで国民の理解を得られるんでしょうか。私は、到底そのように思えません。  さらに言えば、傍受法の二十六条による不服申し立て状況も、私の六月二日の質疑で最高裁は、統計では細かく分類していないので、傍受法二十六条による不服申し立て件数については把握できていないということだったわけですが、その後、さらに私が調査を要請いたしました結果、傍受法二十六条に基づく不服申し立て件数は、二十四年の一月一日から二十七年六月三日現在で、二百五十九件ということであります。  さらに、年次ごとに数を調査いただいて精査いただいた結果、これはちょっと私、何でこういうことになるのかなというのを御説明いただきたいんですが、二十四年は〇件、二十五年は二百五十六件、二十六年は三件、二十七年は〇件。  これは、それぞれの不服申し立てがどのように処理されたのか、あるいは全て却下されたのか、二十五年にはなぜ突出して多いのか、理由をお示しいただけますか。 ○平木最高裁判所長官代理者 最高裁において把握しております合計二百五十九件の不服申し立てについてでございますが、平成二十六年に原裁判取り消しが一件ございまして、その余は全て不服申し立てが棄却されているとの調査結果になっております。  平成二十五年に二百五十六件の不服申し立てがなされている理由につきましては、事務当局では把握しておりません。 ○柚木委員 いや、把握されないと、不服の申し立ては、まさに盗聴されたことによってプライバシー、人権を侵害されたとかさまざまな理由が想定されるわけですが、それがなぜ二百五十六件と突出して多いのか、これを承知していないということであれば、まさにそういった、片方ではどんどん傍受対象を拡充していくけれども、不服申し立てについては、申し立てがありました、あるいは却下しました、理由は知りません、こういうことになるわけですが、これは何でわからないんですか。 ○平木最高裁判所長官代理者 今御報告しましたのは、御報告した限度で、個別報告を求めて把握したものでございますので、事務当局としてはそれ以上把握していないというところでございます。 ○柚木委員 これは、不服の申し立ての状況もきっちりと把握はしていない、あるいはしない、傍受の令状請求が認められなかった却下理由、この概要についてもですね。こういうようなことで、盗聴拡大だけはどんどんなし崩し的にやっていくということになるんですよね。こんなことで本当に国民の理解が得られるんですか。  これは、さらにもう一点、私はこの間、傍受法の二十三条二項の傍受通知の延長についても個別の数字を出していただきました。  警察庁の説明では、二十六年の傍受実施十事件での通知状況は、通知対象の当事者二百九十一名のうち、平成二十七年四月一日時点で、通知済みが百五十名、人定、つまり特定できない当事者が百二十九名、所在不明五名、捜査関係で未通知が七名ということで、半数近い、かなりの数が未通知であって、通信傍受がされて、不利益な証拠とされる可能性があることを知らされないままの状況だと。  これは、特定できないということは最終的に逮捕、検挙できないのではないかという質問に対しては、傍受対象にかかってきた相手だから、人定、つまり特定できない、所在不明で通知できない、その時点での数字なので、明らかになってくるケースはあるので、暫定的な数字だとの説明でございました。  それでは、それを踏まえてさらに質問させていただきたいのは、実施事件の件数九十九件全てとは申しませんが、例えば、平成二十五年の傍受実施十二事件について、この二十三条二項による傍受の通知状況と傍受対象にかかってきた相手の逮捕等の状況についてはお示しいただけますか。 ○三浦政府参考人 通信傍受を実施した事件に係る通信の当事者への通知につきましては、時間の経過とともにその実施状況が変動していくこと、国会報告事項ではないことなどから、都道府県警察に個々の通信傍受の実施に係る通知の実施状況については報告を求めておりませんで、警察庁としては把握をいたしておりません。  また、平成二十五年中に傍受が行われた事件に関して逮捕した人員は、平成二十六年末の時点で計百十七人となっております。もっとも、個々の逮捕された被疑者がそれぞれの事件において傍受した通信の当事者であったか否かにつきましては、これを関連づけた集計を行っておりませんで、警察庁としては把握をいたしておりません。 ○柚木委員 そういう御答弁でありますと、逮捕者百十七名以外の、いわば違法性が認められなかった方も含めて、傍受はしたけれども関係なかった、後で消去しました、それでおしまい、そういうことにもなります。  これは国会報告事項ではない、そういう御答弁でありますと、そのこと自体をやはり見直していかないと、いつまでたっても、法務大臣も御答弁されているように、自分と例えば家族との会話が何らかの形で傍受、盗聴されていて、それを知らされない、知らない、こういう状態が蔓延していくと、普通に暮らしていても何か非常に気持ち悪い社会になってしまうと思われませんか。  私はやはり、もちろん、しっかりと真犯人を検挙していく、そのためのツールを拡充していく必要性については否定しませんが、もう一つの視点、プライバシーや人権の視点が欠落したまま、この間、きょう質問していても、そっちの点はおざなりになったまま進んでいこうとしているんですよね。そういうやり方で本当にいいのかと思わざるを得ません。  もう一点、さらに、私はこれも問題だなと思っているんですが、傍受法十二条二項の立会人による意見申し述べ、これが全件に対してあったかどうか、あった場合はその内容はどうであったか、これについても御答弁いただけますか。 ○三浦政府参考人 平成二十四年から平成二十六年までに警察において通信傍受を実施した三十二の事件につきまして確認をいたしましたところ、都道府県警察から通信傍受法十二条二項による意見があった旨の報告は受けておりません。 ○柚木委員 結局、要は、立会人制度も実効性がどこまで担保されているのか、こういうことであります。  では、逆に、どうすればそういう実効性が担保されるのか、これまでも議論があったわけですが、むしろそういうことを議論すべきであって、立会人もなくして、自由に、好きなときにどんどんやれるようにします、そういう方向性、きょう私が幾つか質問させていただいているそういう視点をないがしろにされたまま、さらにどんどん盗聴が拡充していけるという流れ、これは本当に国民の理解を得られないのではないかと私は思うわけであります。  これは、ちなみに、この傍受なんですけれども、こういう傍受を拡充していくということであれば、当然、人員、予算などの拡充も必要とされてくるというふうに私は想定するわけであります。ですから、そういうことがきっちりとできないとするならば、今の状況は、そういう体制をなかなか拡充することが難しいことによって、逆に言うと、野方図な、なし崩し的な傍受拡充の歯どめになっているという見方もできるわけであります。  これは、ちなみに、この通信傍受を行う上で、当然、捜査側の負担、捜査員の手をとられる時間的負担、予算的な制約、こういったものが想定をされるわけですが、私の捉え方でいえば、そこが傍受の野方図な拡大の抑制的な効果を果たしていると思うわけですが、実際、今回の議論で、傍受の拡充をしていく上で事業者立ち会いがなくてよくなる、何か負担をなくするというような議論があったと思うんですけれども、その負担の中身というのを改めてお聞かせいただけますか。 ○三浦政府参考人 御質問の趣旨が、通信事業者の負担ということなのか、捜査側の負担ということなのか、十分理解をしていない可能性があるのですけれども。  まず、通信事業者の負担ということで申し上げますと、やはり立会人、通信事業者の職員の中から立会人を出す、一定期間、傍受令状に示された期間、場合によっては相当長い期間になるわけでもございますけれども、その期間ずっと立ち会いを行わなければならないといったような負担でありますとか、あるいは、事実上、傍受を実施できるのが通信事業者の限られた施設でございますので、そうした特定の場所を長く提供しなければならないといったようなもろもろの負担が生じているものと理解をしております。  また、捜査側の負担ということで申しますと、今申し上げましたように、特定の場所でのみ実施ができるということでありますので、例えば、遠隔地の警察において通信傍受を実施しようといったような場合には、例えば東京でありますとか、そういうところへ出張等で出向いてまいりまして、相当多数の捜査員が相当の期間そこへとどまって傍受を実施する、そういった旅費等の金銭的負担、また、捜査上の人員を割かなければいけないといった負担も生じているところでございます。 ○柚木委員 事業者、捜査側それぞれについて整理して御答弁いただいて、ありがとうございます。  私、それぞれ申し上げたかったんですが、とりわけ次の質問で伺いたかったのが、事業者側の負担というのは、今御答弁をされた部分というのは私も理解できるわけですが、では、実際、国会報告においてはその日数、通話数単位の表記があるわけですが、この傍受について、一日当たり平均何時間の傍受を行っておって、そしてまた立ち会う事業者に対しては金銭的な補償を行っておられるのかどうなのか、仮に行っている場合は、一日当たり、あるいは時間当たり、その金額は幾らなのか、お示しをいただくことはできますか。 ○三浦政府参考人 まず、傍受の実施の時間というお尋ねでございましたけれども、これは個々の事件によってかなり違いもございますので、ちょっときちんとした統計としてその時間数というものは把握をいたしておりません。  それから、事業者に対する金銭的補償というお尋ねでございましたけれども、通信事業者等に対しまして立ち会いを行ったことに対する金銭的補償は行っておりませんけれども、例えば、傍受が深夜に及び、立会人がタクシーでの帰宅を余儀なくされた場合には、タクシー代の実費分を支払った例があるというように承知をしています。     〔委員長退席、盛山委員長代理着席〕 ○柚木委員 確認の意味でもう一遍お尋ねしたいんですが、タクシー代の支給等を行ったという部分があったんですが、金銭的補償について、当然、時間もあるわけですが、事案ごとに違うのかどうなのか、そうでなくて一律なのかどうなのかも含めて、済みません、もう一度整理して御答弁をいただけますか、ちょっと聞き漏らしていたかもしれないので。 ○三浦政府参考人 何か規定があって一律にお支払いをしているというようなことではございませんで、実際問題として、先ほど申し上げたように、ある事件に関して立会人がタクシーで帰宅せざるを得なかったといった場合にその実費分を支払った、そういう事例があるということを承知しているところであります。 ○柚木委員 ありがとうございます。  そうすると、半ばボランティアといいますか、そういうことなんだと思うんですね。  これは、もちろん見方は分かれるかもしれませんが、この後ちょっとNSAのこともお尋ねするものですから、見方が分かれることも私としては理解した上で、しかしお尋ねを申し上げたいのは、そういう形で事業者の負担等を考慮して、では、もうそういうことで立ち会わなくていいという形にすることで事業者負担を減らすという見方なのか、そうではなくて、やはり必要なものについてはきっちりと、対価といいますか、そういった形でお支払いをする中で、一つの歯どめとしての役割を担っていただくということが必要なのか。そういった点について、私はやはりきっちり議論がなされていくべきだと思っております。当委員会で視察等も含めて今後も行われるというふうに聞いておりますし、そのあたりも含めて、私はしっかりと議論を深めていくことが必要だと思っております。  それから、これに関連して、アメリカの国家安全保障局、NSAの大規模傍受についても、資料もおつけしておりますが、この間、さまざまな報道、指摘がございます。資料四ページ目におつけしております。これは少し前の報道ですけれども、アメリカの上院でテロ情報収集再開へ、米国自由法案可決という中の報道なんです。  御案内のように、アメリカにおいては、九・一一以降、極限状況の中で愛国者法が成立をして、その緊急事態法に基づき、NSAによる大量の通信傍受、情報収集がなされていたことがスノーデン事件で明らかになったわけであります。これもまあ、私もちょっと想像がつかないんですが、携帯電話メッセージが一日二億件、GPSの位置情報は一日五十億件です。  これは、この報道もつけておりますが、実際に、「CIA元職員のスノーデン容疑者が一三年に実態を暴露し、行きすぎた活動だと批判が高まった。大統領は昨年三月、監視対象の絞り込みや記録を政府ではなく電話会社に保持することなどの見直し案を発表した。」とあるわけでございます。  このアメリカNSAによる大規模傍受、これはそもそも海外のいろいろな報道もなされているわけですが、まず、対象とされた我が国の関係施設、個人等について政府は把握しておられますか、把握しておられるのであればその内容はお示しいただけますか。 ○高橋政府参考人 お答えいたします。  アメリカの国家安全保障局、いわゆるNSAによる通信記録の収集問題についてでありますけれども、これにつきましては、日米政府間でしかるべく意思疎通をしてきたものというふうに承知しておりますけれども、事柄の性質上、その内容につきましてはお答えすることを差し控えさせていただきたいというふうに思います。 ○柚木委員 控えさせていただくというのは、ちょっと私、施行後の状況をよく把握していないんですが、これはいわゆる特定秘密に指定される、そういうことなのか、そうではないのか、どういうことでお答えいただけないのか。 ○高橋政府参考人 このNSAによります通信記録の収集問題につきましては、日米政府間におけるインテリジェンスに関する意思疎通の問題であるということで、これを明らかにしますと外交当局との今後の意思疎通に支障が生ずるおそれがあるということで、差し控えさせていただきたいということでございます。 ○柚木委員 差し控えるの中身が、把握しているのかどうなのかというのがあえて読み取れないという形の御答弁だと思うんですが、それは本当にそれでいいのかどうなのかというのは、私はもう少し議論を今後させていただきたいと思います。  ただ、アメリカの場合は、先日、五月の末日で一旦失効したいわゆるサンセット法、時限立法であって、大統領に緊急事態的な法的な権限を付与するかわりに、立法府、つまり日本でいえば国会がしっかりと監視をしていく、そういう形式になっているわけであります。我が国においてはそこはどうなのかというのが、私この間議論させていただいておりましても、十分に担保されていないのではないか、そういう問題意識を持たざるを得ません。  それで、通信傍受なんですけれども、先ほど事業者の負担と捜査側の負担と分けて御答弁いただいたのは、この後の質問につながる部分なのでありがたかったんですが、こういう観点をちょっとお尋ねしたいんです。  通信傍受の記録から捜査に必要な通信部分を抜き出す情報処理といいますか、そういう作業は非常に膨大だと思うんですね。今後、傍受対象が拡充をしていくと、今NSAの報道も紹介をしているわけですが、その情報処理作業自体を誰がどういう形で作業していくのか。場合によっては、外部委託とかということも考えられるのか。ちょっと、なかなかそこら辺のイメージができないものですから、警察庁、御答弁いただけますか。     〔盛山委員長代理退席、委員長着席〕 ○三浦政府参考人 通信傍受法上のいわゆる傍受記録の作成につきましては、捜査員が機器を手動で操作して行っております。具体的には、傍受した通信の全てについて、犯罪関連通信等に該当するかどうかを判断し、通信傍受法上、消去しなければならない通信の全てを手動により消去する方法で行っております。  通信傍受法上、捜査員には厳格な守秘義務が課されている上、捜査の秘密を保持する必要もありますことから、司法警察員が行うこととされている傍受記録の作成等の作業について、これを司法警察員以外の者に委託するということは考えておりません。 ○柚木委員 現段階で考えていないという答弁を私は確認させていただきました。  ただ、アメリカの事例を見ていると、資料の五にもつけておきましたけれども、民間五十万人に閲覧権限という形で、結局、情報処理に対応できる、そういう専門職員の育成が間に合わなくて、外注をして、まさにアメリカにおける最高機密にアクセス権を持つ百四十万人のうち民間の方が約五十万人、こういう状況にもなっております。  今後、今の段階で外部委託を考えていないということなんですが、人員不足になって、こういうような議論が私は起こり得るのではないか。その場合には、やはり情報の保全というものについて私は非常に懸念を持っております。そういった点については、この段階でも、まずしっかりと指摘をさせておいていただきたいと思います。  それから、この通信傍受に関連して、前回もちょっと通告していてお聞きできなかった部分がありましたので、一点、重要な点だと思いますので、ぜひ確認をさせていただきたいんです。  報道機関に対する傍受の禁止、これは、もともとの通信傍受法、盗聴法の議論のときにも非常に大きな議論になったわけですが、報道の自由、取材の自由という憲法上の問題があるにもかかわらず、法文に明記されていないというのは、私は、やはり今回、法改正の中でしっかりと明記をすべきだ、そういうふうに考えるわけです。  これは、大臣の見解を、大事なところなので明確に御答弁いただけますか。 ○上川国務大臣 現行の通信傍受法の議論の折にも、この報道機関の報道の自由やまた取材の自由につきまして御議論がなされたというふうに承知をしているところでございます。  通信傍受法の十五条ということでございますが、医師や弁護士等の職にある者との間の通信については傍受をしてはならないということで規定をいたしておりまして、これに対して、報道機関との間の通信については傍受の禁止の対象としていないということでございます。  報道機関につきましては、さまざまな形態のものがあり得るというところでございまして、傍受の禁止の対象となり得るものとなり得ないものとの間の線引きがなかなか困難であるということ、また、報道機関による取材及び報道機関に対する情報の提供につきましては、原則、報道に資することを前提としたものでありまして、個人の秘密を委託されることによって成り立つ医師あるいは弁護士と同一に論じることができないということから、今般の法改正におきましても、委員御指摘のように、報道機関の通信を明示的にこの第十五条の傍受の禁止の対象とするということにつきましては困難であるというふうに考えているところでございます。  もっとも、報道機関の者による通信につきましては、その特質に鑑みて、現行通信傍受法の施行以来、警察庁及び法務省の通達によりまして、報道機関が設置、使用している電話等については、報道の自由を尊重するという観点から、原則として傍受の実施の対象としないということであります。  また、被疑者が使用している電話を傍受の対象としている場合にたまたま報道機関が取材のために電話をかけてきた場合におきましても、取材のための通信であるということが判明すれば、それまでの間に犯罪関連通信等を傍受している場合を除きまして、報道の自由を尊重するという観点から、直ちにその傍受をとめなければならないということとしておりまして、今般の通信傍受法の改正後も、この報道機関の取材活動を通信傍受の対象とするということにつきましては想定をしていないということでございます。 ○柚木委員 これは資料の二、三にそれぞれつけておきましたが、まず資料の二につけておりますけれども、例えば、海外でドイツの事例がこの報道には紹介されておりますが、報道関係者を医師や弁護士らと同様に通信傍受の対象から除外している。  しかも、犯罪と無関係な会話であった場合に傍受されたことを知るすべはないという部分も含めて、私は、今の御答弁というのは、通達でという担保は非常に脆弱ではないかと言わざるを得ません。  また、記者が犯罪の共犯と疑われる場合については傍受対象になり得るということなんですね。これも、どこでどういうふうな形で線引きとか、具体的な明確な指針が示されているという状況には、私はないんじゃないかと。ですから、結果的に、疑えると思って傍受したんだけれどもそうじゃなかったということであれば、傍受できちゃうわけですよね。  ですから、そういうことも含めて、それこそ取材源の秘匿がそれによって守られるのか、それを報道機関に通報することによってさまざまな、そういう犯罪あるいは不公正を抑止するとか、あるいはきっちりと対応してもらうとか、そういう機能が損なわれてしまうおそれがあると思うんです。  これは、大臣、今御説明があったんですが、もう少し、そういった諸外国の事例も研究をいただく中で、報道の自由、取材の自由という部分についてきっちり法改正、法文の中に明記いただくことを何とか御検討いただけませんか。 ○上川国務大臣 通信傍受法の議論が行われていた折にも、今委員から御指摘のようなことにつきまして大きな議論の論点になったというふうに承っているところでございます。  また、その折にも、諸外国の事例につきましての一部情報も開示されたということでございまして、例えば、ドイツの通信傍受制度においても報道機関の通信につきましては傍受の対象外とはなされていない、そうしたことについても明らかとなっているところでございます。  そういったことを踏まえた上で、お医者さんとかあるいは弁護士さんのような職業の事例と異なる扱いということで法律の規定はなされなかったということでありますが、しかし、大変大事な問題でありまして、通達によりましてしっかりと傍受の対象としないということを運用の中で担保しているところでございます。 ○柚木委員 済みません、私は、この報道の事例は、ドイツでは報道関係者を医師、弁護士らと同様に傍受の対象から除外しているというふうな報道を紹介したんですが、対象外とされていないというふうに御答弁をいただいたんですが、ちょっとこれは私の認識が違うんですかね。 ○林政府参考人 平成十一年の七月の国会におきましても、ドイツについて一部で通信傍受の禁止の対象になっているのではないかという議論もあるけれども、ドイツでは報道機関が通信傍受の対象から除外されていることはないというふうな答弁がなされておるところでございます。 ○柚木委員 これは私の方でもうちょっと確認してまたお尋ねをします。  残された時間が少なくなってきたんですが、可視化の議論、これまでも行われております。私が、きょうお尋ねする部分、非常に方向性として、これで本当に大丈夫なのかなと思いますのは、国家公安委員長、この間の質疑の中で、可視化、録音、録画しなくとも、被疑者取り調べ監督制度を設けたので取り調べの適正化は図られる、そういう御認識を述べられていると思うんです。  その点についてちょっと具体的に幾つかお尋ねしたいんですが、同制度における取り調べの監督官、この方はどのような階級の方で、現在何人おられて、取り調べが行われる全ての警察署や交番等に配置されているのかどうなのか。個別の事案について幾つか伺いますので、これは参考人の方で結構ですので、まずそれを御答弁いただけますか。 ○沖田政府参考人 被疑者取り調べ監督制度におきましては、各都道府県警察に置かれる取り調べ室に係るものについては警察本部長が指名する取り調べ監督官、警察署に置かれる取り調べ室については警察署長が指名する取り調べ監督官がそれぞれ配置されることとなっておりまして、現在、全ての警察本部及び警察署に取り調べ監督官がおります。  具体的な数字等を申し上げますと、本年四月における全国の状況ですが、警察本部では、警視四十三人、警部七十九人の合計百二十二人、警察署につきましては、警視二百四十二人、警部九百四十一人の合計千百八十三人でございます。  なお、交番等につきましては、警察署の取り調べ監督官あるいはその下に置かれる監督補助者が確認等を行うこととされておりますことから、交番等自体についての取り調べ監督官の配置はございません。 ○柚木委員 ちょっと時間が迫ってきていますので、まとめて伺いますので御答弁いただきたいんですが、昨年の部分が一番直近のデータと思われますので、お尋ねをします。  警察で行われた全ての取り調べ件数と、そのうちこの制度で監督された取り調べ数をお答えいただきたいのと、監督をしたことによって実際に調査が行われた数、調査結果、その結果に基づいて行われた適正化措置について、コンパクトで結構ですから御答弁をお願いします。 ○沖田政府参考人 平成二十六年中で全国の警察で行われました取り調べ件数は約百四十五万件でございまして、このうち約九六%に当たります百三十九万件につきまして視認による監督を行っております。この結果、監督対象行為として調査した件数は全部で五百件でございまして、このうち監督対象行為として認定されたものは三十二件となっております。  なお、こうしたことで把握されたものにつきましては、当然、必要な業務上の指導を行って再発防止を図ったほか、あるいは、事案によっては監察部門にも通報して必要な対処をしているところでございます。 ○柚木委員 それぞれわかりました。  それで、さらにもう一つお尋ねした上で公安委員長にお尋ねしたいんですが、先ほどの山尾委員の質疑のやりとりも私も非常に大事なやりとりだったと思いますが、この制度で、例えば苦情申し出をされた数とか申し出の取り扱い、それから申し出がもととなって調査の行われた数、その結果及び結果に基づいて行われた適正化措置について御報告をいただけますか。 ○沖田政府参考人 平成二十六年中、取り調べ監督制度に基づいた苦情申し出件数は四百五十九件でございます。このうち調査が行われた件数は三百五十六件でございまして、このうち三件につきまして監督対象行為として認定いたしております。  これにつきましては、監督対象行為に該当したものはもちろん、それ以外のものにつきましても、担当部署等へ全て通報し、必要に応じて業務上の指導も行い、事案によっては監察部門にも通報しているところでございます。 ○柚木委員 今それぞれ、るる御答弁をいただいたわけですが、それでもやはり取り調べにおけるさまざまな不適切な事例が起こるわけでありまして、そのことはきょうの先ほどの同僚委員の質問の中でも指摘されているわけです。  国家公安委員長、今のようなそれぞれの実績というか件数をお示しいただいてもなおやはりそういう事例が出てくる現状を考えたときに、可視化、いわゆる録音、録画しなくても、この制度によって不適正な取り調べを全て未然に防止して、そして適正化の確保ができる、そういうふうに本当に根拠を持っておっしゃることができるかどうか、それを御答弁いただけますか。 ○山谷国務大臣 被疑者取り調べ監督制度は、不定期の視認等の抑止効果を働かせることにより不適正な取り調べの未然防止に資するほか、視認や苦情等を端緒とした調査を行うことにより取り調べの適正確保に役立っているものと認識をしております。  しかしながら、被疑者取り調べ監督制度のみによって取り調べの適正確保が図られるものではないということは認識をしております。取り調べが事案の真相解明のために果たしている重要な機能をできるだけ損なわないよう留意しつつ、被疑者取り調べ監督制度や取り調べの録音、録画、さらには取り調べに関する捜査員への教養の充実等、さまざまな施策を適切な形で組み合わせていくことが重要と考えております。 ○柚木委員 時間が来ましたので終わりますが、今最後に御答弁があったように、この制度のみによって担保されるわけではない。今それぞれ、捜査員の教養の充実等るる御答弁があったんですが、私は、その教養の充実等ももちろんやっていただけばいいんですが、やはり可視化にまさる適正化はないと思っています。  つまり、その部分をしっかりと拡充していただくことが最大の適正化の担保になる、私はそのように思っておりますので、そのことをさらに今後質疑を通じて深めさせていただくことを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。