医科歯科連携及び周術期口腔機能管理に関する質問主意書
「人生百年時代」と政府は提唱するが、百歳になるまで健康で長生きするためには、歯の健康が特に重要である。
高齢者に限らず、偏りなく栄養をとるには自分の歯で食べ物を噛めることが必要。自分の歯を失ってしまっては(入れ歯を使わなければ)柔らかいでんぷん質のものしか食べられず、すり潰されたものでなければ、たんぱく質の含まれる肉やビタミン・ミネラルを含む果物・野菜を自ら口にすることはほぼ不可能になってしまう。総入れ歯にしても噛む力が元の三割程度までに落ちるとも言われており、柔らかく調理されたものしか食べられなくなって、しかも一度に口に入れられる食べ物の量も減ってしまう。入れ歯が合っていないなどで食事時に痛みがあるケースも多く、食事をとることに消極的になりかねない(なお、自分の歯と同じように噛める「インプラント」技術もあり、インプラントを使う方も広がってはいるが、手術費用が高いという課題がある)。このような栄養摂取バランスの偏りがフレイル(加齢に伴い筋力が衰え、疲れやすくなり家に閉じこもりがちになるなど、年齢を重ねたことで生じやすい衰え全般を指す)の原因の一つになっている。
歯科医師会や歯科医師の皆さんが「八〇二〇運動」を進めてこられたことに深く敬意を表するが、依然として続く歯の健康に関する課題について以下質問する。
1 フレイルに関して「オーラルフレイル」というアプローチがある。(一)歯の数、(二)咀嚼能力、(三)舌圧、(四)滑舌、(五)硬いものが食べにくい、(六)お茶等でむせる、の六項目のうち三項目で基準を超える場合、その人が「オーラルフレイル」にあると判断している。このオーラルフレイルは全身のフレイルの初期段階として発見が容易であり、口腔機能の低下の対策を進めるためにも「オーラルフレイル」のチェックは重要である。 地域包括ケアシステムにおけるフレイル対策として、オーラルフレイルの診断を通じた医科歯科連携の構築を図ることが必要だと考えるが政府の見解如何。
2 二〇一三年(平成二十五年)十一月に中央社会保険医療協議会(中医協)専門委員が中医協に提出した資料では、消化器外科に入院している患者にこれまで通り口腔機能管理しないと平均四十二日入院したのに対して、口腔機能管理を受けた患者は入院日数が平均二十九日と短い。心臓血管外科に入院している患者についても、口腔機能管理しないと平均三十八・六日入院したのに対して、口腔機能管理が行われた患者は入院日数が平均二十九日とやはり少ない。 このようなエビデンスをもとに、すでに二〇一八年度(平成三十年度)診療報酬改定により医科歯科連携の推進として、歯科関連で「診療情報提供料(Ⅰ)の歯科医療機関連携加算の対象手術の拡大」「周術期口腔機能管理後手術加算の対象手術の拡大」が図られている。病院におけるこのような周術期の口腔機能管理についてさらに取り組みを広げるべきだと考えるが政府の見解如何。 右質問する。