物品販売業を営む店舗における自動火災報知設備の設置義務にかかる消防法施行令に関する質問主意書
1 消防法施行令第二十一条第三号イにより百貨店、マーケットその他の物品販売業を営む店舗は床面積三百平方メートル以上の場合、自動火災報知設備の設置が義務づけられている。この自動火災報知設備は、一般社団法人日本火災報知器工業会のホームページによれば、火災による煙・熱を煙感知器や熱感知器が早期に自動的に感知して、あるいは発信機から火災発生の連絡が受信機に流れたら、受信機が警報ベルなどを作動させて建物内の人達に火災を知らせるとともに、防火防炎シャッターや防火戸なども作動させる設備である。
この三百平方メートル以上という基準は、一九七二年(昭和四十七年)十二月に自動火災報知設備の設置を義務づける対象が床面積五百平方メートルから三百平方メートルに引き下げられたことによる。
確かに、施行令改正のころの一九七二年(昭和四十七年)五月、大阪で「千日デパート火災」が起き死者百十八人、負傷者八十一人の大災害があったなど、百貨店等の火事が起こり多くの国民の注目を浴びたが、しかし千日デパートの延床面積は二万平方メートル以上あり、五百平方メートルや三百平方メートルとは桁が違う。この時の消防法施行令第二十一条第三号イの基準の引き下げの理由と、この三百平方メートルの根拠をご教示いただきたい。
2 これに先立つ一九七二年(昭和四十七年)一月には、自動火災報知設備の設置が床面積五百平方メートル以上で義務づけられている施設として「百貨店又はマーケット」が規定されていたところに物品販売業を営む店舗が追加された。
この頃千日デパート火災など百貨店の火災が話題になっていたが、これは百貨店であり、一つの物品販売業の店舗とは異なる。確かに『消防法施行令解説』に述べられているように百貨店・マーケット・店舗にはいずれも不特定多数の買い物客等が集まるが、複数の店舗・売り場が集合する百貨店・マーケットと一つの物品販売業の店舗では集客数も質も大きく異なる。複合する店舗・売り場それぞれに集まる顧客は多種多様であるが、一つの店舗に来る顧客はその店のみを目標に集まるからである。この一九七二年(昭和四十七年)一月に消防法施行令第二十一条第三号イにかかる別表第一(四)で百貨店とマーケットに加えて、個々の物品販売業店舗を追加した理由如何。
3 火災報知器各社のホームページによれば、三百平方メートル以上の物品販売業店舗に自動火災報知設備を新規に設置工事を行うには設備自体の費用と工事費用を合わせて最低でも百五十万円かかるのが相場のようである。確かにスプリンクラーなど自動消火設備に比べれば費用負担は少ないが、しかし個人事業主や中小零細企業にとってはこの負担が重い。
政府が「地方創生」を唱えるならば、多くの店舗をかまえるチェーン店舗がさらに出店しやすくするよりも、各地で特色ある個人経営や地元中小企業の経営による物品販売業店舗がより出店・営業しやすいように、自動火災報知設備の設置基準を三百平方メートルから、大規模小売店舗立地法施行令に定める千平方メートルまで緩和すべきであり、また一定の規模以下の店舗等については医療機関や福祉施設同様に自動火災報知設備の設置について政府が補助すべきだと考えるが、政府の見解如何。
4 先に述べたように、百貨店やマーケットと個々の物品販売業を営む店舗は人の流れが異なることから、自動火災報知設備の設置義務について百貨店及びマーケットと、物品販売業店舗とで基準を分けるべきだと考えるが、政府の見解如何。